タイ労働法における試用期間雇用の概要
試用期間雇用は、タイを含む世界各国で一般的に採用されている雇用形態です。タイにおいて試用期間雇用を規定する主な法律は、労働保護法(B.E.2541(1998年))および民商法典です。試用期間雇用とは、雇用主が従業員を採用し、試用期間中にその勤務実績や能力を評価することに合意する雇用形態を指します。従業員の業務遂行能力が雇用主の基準を満たした場合、雇用主は継続して雇用を行います。一方で、従業員の勤務実績が雇用主の期待に達しない場合、雇用主は雇用契約を終了することができます。
1. 試用期間の条件および期間
タイ労働保護法には、試用期間雇用の性質について明確な規定はありません。そのため、雇用主と従業員は、試用期間中の雇用条件について自由に交渉し、合意することができます。例えば、試用期間の長さ、各種手当、福利厚生などが挙げられます。
例えば、住宅手当や健康診断などの特定の福利厚生は、試用期間を終了した従業員のみに付与される場合があります。ただし、試用期間の長さについては当事者間で自由に決定できるものの、過度に長い期間(特に120日を超える期間)は避けるべきです。なぜなら、従業員の能力評価のためにそのような長期間は通常必要ではないためです。また、試用期間が不当に長い場合、雇用主と従業員の間で紛争が生じて裁判所に持ち込まれた際、裁判所から雇用主の悪意ある意図とみなされる可能性があります。
2. 評価
通常、試用期間を通過するかどうかは、一定期間経過後に雇用主が従業員の業績を評価することで判断されます。そのため、雇用主は標準化された評価フォームを用意し、従業員の勤務実績を評価することが推奨されます。
評価基準には、技能、責任感、業務量および業務品質、注意力、チームワーク能力などを含めるべきです。標準的な人事評価制度を導入することで、雇用主が明確な基準に基づいて従業員を評価していることを示すことができ、個人的な好みや偏見による恣意的な判断ではないことの証明にもなります。
3. 法律上の保護
試用期間中の従業員も、一般従業員と同様に労働保護法による保護を受けます。これには、病気休暇、時間外労働手当(残業代)、年次有給休暇などが含まれます。
ただし、雇用主は、試用期間を通過した従業員と比較して、試用期間中の従業員に対する福利厚生やインセンティブを少なく設定することができます。例えば、販売手数料、出張手当、住宅手当などが該当します。これらの給付は法律で定められた最低限の待遇を超えるものであるためです。このような取り扱いは、会社の就業規則および当事者間の雇用契約によって定められます。
4. 解雇予告
試用期間中であっても、雇用主は民商法典に基づき、従業員に対して解雇予告を行う義務があります。
解雇予告は、現在の給与支払期間中に通知されなければならず、次回の給与支払日(または契約で別途定められている場合はその日以降)に効力を生じます。
ただし、従業員が3日以上無断欠勤した場合、雇用主に対する犯罪行為を行った場合、または労働保護法第119条に定めるその他の重大な違反行為を行った場合には、解雇予告は不要です。
また、雇用主は、解雇予告期間の代わりに予告手当を支払うことで、上記期間よりも早い日付で雇用契約を終了させることができます。予告手当の金額は、従業員が次回給与支払日まで勤務した場合に受け取るはずの賃金額と同額となります。
5. 退職金(Severance Pay)
労働保護法では、労働保護法第119条に規定された正当な解雇理由がない限り、雇用主が雇用契約を終了する場合、試用期間中か否かを問わず、従業員に退職金を支払うことが義務付けられています。
従業員が120日以上勤務した場合、退職金は30日分の賃金に相当する額となります。
6. 不当解雇に対する補償
労働裁判所設置法に基づき、裁判所は雇用契約の終了が不当であると判断した場合、従業員に対して補償金の支払いを命じる裁量権を有しています。
法律上、「不当解雇」の明確な定義はありません。しかし、判例によれば、「不当」とは従業員側に過失や落ち度がないにもかかわらず行われた解雇を意味します。
試用期間中において、従業員の業績が雇用主の定める基準を満たしていない場合、雇用主は原則として不当解雇補償の責任を負うことなく雇用契約を終了できると考えられます。
ただし、雇用主は明確な評価基準を有しており、かつ従業員に対して適切な評価面談や評価手続きを実施したことを示せなければなりません。これは、従業員の業績が基準を満たしていないこと、および雇用契約終了が合理的かつ公正であったことを裁判所に証明するためです。
7. 実務上のポイント
雇用主は、必要に応じて試用期間の長さを自由に設定することができます。
しかしながら、それは解雇予告(または予告手当の支払い)、退職金の支払い、あるいは不当解雇補償の責任が免除されることを意味するものではありません。
そのため、試用期間中の従業員が組織に適していないと判断される場合には、雇用主は将来的な法的責任や金銭的負担を最小限に抑えるため、事前に十分な計画を立てる必要があります。なぜなら、各種義務には法律上定められた期限や要件が存在するためです。
例えば、雇用開始から4か月目に達する前に雇用契約を終了した場合、退職金支払い義務は発生しません。一方で、法律で定められた解雇予告については適切に実施することが極めて重要です。